第三話 鈍色のマリオネット③対価

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 翌昼。  私はツァラトゥース中層部に位置する市場へと足を運んでいました。    通りに沿って市場が展開していたオルセアとは違い、こちらは広場を取り囲むように様々な店舗が立ち並んでいます。  種類は露店から店舗まで様々。  工業都市と称されるだけあって、食べ物や服屋の間にはちらほらと工具店が見受けられ、素人目には何が何だか分からない部品が並んでいます。  同行者は、二人。  一人目は、つまらなさそうに欠伸をしながら前を歩く人造人間ノア。少しは、女の子らしくしやがれです。  そしてもう一人が―― 「アイギスちゃん。何処か行きたい所はありますか?」  ペテロさんの愛孫、アイギスちゃんです。 「………………いえ、特には」  何とも素っ気ない返答。視線を落とし、先程から目すら合わせてもらえません。    ですが、そのような人見知りな所も愛くるしいです。なおこの場合『私の事が嫌いだから素っ気ない』という可能性は考えない事にします。世の中、ご都合主義の方が楽に生きられるのです。  ――さて、私とノアが何故、アイギスちゃんと仲睦ましく(?)街を練り歩いているか。理由はペテロさん直々の依頼――つまり、アイギスちゃんの遊び相手兼護衛です。  何でも今回の発掘作業にはエデンの存在が必要不可欠だそうで、現在は男共や発掘関係者の方々と共に発掘に関する工程を受講中。  本来なら私達もそれに参加しなければならないので、必然的にアイギスちゃんは屋敷に独りぼっちとなってしまいます。  昨日あんな事があったばかりなのに、それはあまりにも危険。その事を危惧したペテロさんが、私達にアイギスちゃんの御守りを依頼した、という訳なのです。    ――アイギスちゃんが顔色を伺うようにこちらを見てきたので、極上の笑顔でお出迎えしました。頬を朱に染めて視線を逸らす仕草が実に可愛い。べりーきゅーとです。ハァハァします。いますぐ抱きしめたいです。   「……オマエ、まさか幼女嗜好(ロリコン)カ?」 「人聞きの悪い事言わないで下さい。私はただ子供が大好きなだけです。……というか、貴女やっぱり私の心読んでないですか?」  いつの間にかこちらを振り向いていたノアが、不審そうな顔でとんでもない事をのたまってきました。  とんだ濡れ衣です。お門違いもいい所です。  何度も言いますが、私は『幼い』女の子が大好きなだけなのです。
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