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「おぉ、遂に始まったな」
ファニール城内、展望室からソックがまるでショーでも見ているかのような瞳でその闘いを見つめる。
隣では、マリアベルが肘を立てながら、無表情でその様子を見つめていた。
「……妙だな」
マリアベルはそう呟くと、ソックは首を傾げる。
「何故奴等は正面突破をしてくる? 武具が優れているとはいえ、あの程度で勝てると思っているのか?」
「はぁ? 思ってるから攻めてきてるんだろ?」
「だが、奴等は我々の軍を一度見ているはずだ。わざわざあの程度の戦力で、犠牲の出る方法で攻めてくるなんて、考えられるのか……。もしくは、ただ追い詰められて困惑したゆえの愚策なのか……」
マリアベルは手を顎に添えて考えを巡らせ始めた。
自分の世界に入ったマリアベルを見て退屈と思ったソックは、ふと窓から城を見つめてみる。
「……おっ!」
突然ソックは壁に手の平を付け、窓の外に見えるモノに釘付けになってしまった。その様子を見たマリアベルが視線を向ける。
「どうした、ソック?」
「ファニール王……あんたの今の不安が直ぐに解決するものがこっちに見えるぜ」
ソックは手招きしてマリアベルを呼ぶ。眉をひそめながらマリアベルは席を立ち、そちらへ向かうと、その光景に目を見開いた。
正面から人間達が攻めて来る中、そちらにばかり気が回っていた為気付かなかった。
草原の広がる城の裏口からは、2人の魔物が近づいてきている。
1人は1つ目の筋肉質な魔物。
もう1人は真っ黒のロングコートに額から出る1本の角。オールバックに整えられた肩に掛かる白髪を持つ魔物。
「魔王……! まさか、ロアーヌと組んでいるというのか!?」
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