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悟られぬよう、気配を消しつつマクベスとタウルが近づいて来ているのだ。
ロアーヌ軍に気を取られていた為、ソックが偶々発見していなければ確かに気付く事は出来なかった。
「今すぐ軍を戻せ! 奴等を殺すのだ!」
「そりゃ無理だぜファニール王。あちらはあちらで中々の戦力だ」
マリアベルはロアーヌ軍との戦場に目を向ける。そこでは確かに個々での戦力はファニールの方が上だが、どうしても近代兵器には苦戦を強いられているようであった。
それを見て、眉間にしわを寄せるマリアベルだが、舌打ちをしながらも不敵な笑みを浮かべる。
「ふ、そうか。だが誤算だったな、こちらにいるのは精鋭中の精鋭だ。魔王もあの程度の戦力で来るとは……奇襲をする以外に策はなかったみたいだな」
マリアベルは再び通信機を取り出すと、番号を打ち込んだ後に受話器を耳へあてた。
「私だ。裏庭からも敵が来ている。勇者の剣を与えたサタンを開放しておけ」
電話先で驚いたような声が聞こえてきたが、了解したとの言葉を聴き、通話を切った。
「はははっ、サタンか……確かに勇者の剣を与えたらそれだけで戦力として事足りそうだな」
ソックがヘラヘラと楽しそうにそう言うと、急にどういう訳か出入り口へと歩き出した。
その様子にマリアベルは眉をひそめる。
「どうしたんだソック。見学はしないのか?」
「ああ、念のため俺も下に行って来るぜ」
ソックは手をひらひら振って挨拶すると、扉を開けてスキップでもしているかのような足取りで先の階段を下りていった。
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