魔王と勇者

3/35
6598人が本棚に入れています
本棚に追加
/818ページ
ブラックとサタンは屋根に着地をする。ソックを取り囲むような立ち位置となり、中心に立つソックが全員の注目を一身に浴びる形となる。 しかしブラック達に気付きもしないのか、ソックは倒れるマリアベルをただ見つめているだけである。 ソックに怪しい動きが無い事を気にしつつ、オークはゆっくりと身体の大きなサタンのもとへと歩む。オークは警戒をしているサタンの目の前に手に持っていたマクベス、エナ、リルムをそっと置いた。 「こいつらは先の戦いで瀕死の状態だ。特にマクベス、リルムはいつ死んでもおかしくない状況にある。下に魔物たちが来ているんだろ? 私は空を飛べないからサタン、お前が代わりに下まで運んでくれないか」 「な、なんだよ急に……変わり過ぎじゃないかお前?」 オークの豹変ぶりにサタンは逆に面くらっているようだ。しかし断る理由もなかったのか、サタンは素直にうなずくと、その大きな腕で3人を抱えて翼を羽ばたかせた。 サタンが移動した事を確認すると、オークはソックに視線を戻す。未だにマリアベルを眺めながら、呆然と立っているだけである。 「ソック、私がお前に命令した人間と手を組む話だが、もう辞めだ。こんな状況になってまでまだ抵抗しようとも思わないし、先代魔王マクベスも敗北してしまい、根本も崩れてしまった……他の者たちに顔向けできないのも分かるが、兎に角今は……」 「おい、オークよぉ。俺がいつあんたに『命令』されたんだぁ?」 ソックはマリアベルから視線を外すことなく口だけ動かした。 「俺はあんたの下についたんじゃない。かつての魔王マクベス様についていたんだ。さっきの子孫だかなんだか知らねぇが、あんなクズ魔王と共に歩くようなあんた等のもとに帰りたいなんて思わねぇ」 「なに?」 「あたりめぇだろう。初めにあんたから『ヘタレ魔王復活』の連絡を受けた時にもう魔物界は終わりだと思ったさ……今更戻るなんて死んでも嫌だね!」
/818ページ

最初のコメントを投稿しよう!