魔王と勇者

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オーク達は兎にも角にもこの場から離れる事を考えた。 今は城の近くに仲間の魔物達が来ている。サタンに連れて行かれたマクベスやリルム達にも今の状況を伝えなければならない。 既に、ここにいる戦力となる魔物達は満身創痍であり、あんな怪物と戦える状況ではないのだ。 「一時撤退するぞ、オーク」 ブラックも考えは同じようで、迅速に仲間の元へ降り立とうとする。 ほぼ急降下でブラックは仲間の元へ急ぐが、焦燥感からか、ソックが追ってくる気配に気付いていないようだった。城から飛び降りて迫りくるソックの姿を視界に捉えたオーク。ブラックに目を向けても気付く気配がない。 「ブラック、俺の腕を放せ!」 「なに?」 ブラックは訳も分からず振り返ってきた。そこでようやくソックの姿を捉えることが出来たようだ。引っ張る腕を放し、オークが空中に放り出される形となった。 オークは少しでも時間を稼ごうと、自身の魔力を最大限に引き出す。 空中にいる中で足元と言えばおかしいかもしれないが、魔力に反応したオークの足元の大地が、瞬時に巨大な槍のような形となって地面から突き出てきた。ファニールの城下町をなるべく巻き込まないようたまたま目に入った広場を利用した大地を操る術。それはファニール城をも飲み込んでしまいかねない程の規模であった。 「突き刺せ!」 オークが右腕を上空へ向けると同時に、突き出てきた槍が急激に雲を突き刺すまでに伸び上がる。それは迫り来るソックを突き刺したように見えた。それは高層ビルのようなたたずまいで、魔物達の目の前にそびえ立つ。 雲から顔を出した月の明かりが遮られ、魔物達のいる城門前を暗闇に落とした。 「オークさん!」 「な、なに、何が起きているのよ?」 突如、城から飛び出してきたオーク達を見た魔物達に、動揺の色が広がっている。
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