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月曜日。
俺は眠い目を擦りながら通学路を自転車で走りぬける。
土曜日に劇的な変化を見せた飯坂に内心ワクワクしていた。
あの後、予定通り眼科に行きコンタクトに変えた。
あの馬鹿、目に入れたレンズが貼りついて取れなくなったらどうするんですか!!なんて言って指導してくれた店員さんを困らせたのだ。
お陰でだいぶ時間を使ってしまった。
それから古着屋巡りをして、表参道で食事をして帰ってきたわけだが…。
自分の予想よりだいぶ変わった飯坂を同じクラスの奴らはどんな反応を示すのか。
結構いい線までいっているからこそ楽しみだったりする。
『…………ん?』
すると通学路を走る俺の前に深緑の頭巾を頭に被った学生が歩いていた。
明らかに不審人物で周囲からはヒソヒソと小言を囁かれている。
それはそうだ。
沢山の生徒が歩いている中で一人だけ変な頭巾を被っている。
まさか。
嫌な予感にゴクリと息を呑んだ。
そして追い越し間際にそっと顔を覗き込む。
「ごごごご、梧桐先輩!!」
『げっ!!』
それは紛れもなく飯坂本人だった。
普段から怪しい怪しいと踏んでいたわけだが、ここまで不審人物だとは思わない。
だから思わず顔を顰めてしまった。
彼が俺を呼ぶと同時に嫌悪感たっぷりな声を放ってしまう。
「わぁ!置いてかないで下さい~!」
こんな通学路で目立つ事は避けたかった。
だから他人のフリをして走り去ろうとする。
「ごーとーうーせんぱーい!」
『くっ…』
だから名前を呼ぶな!!
俺は恥ずかしさのあまり振り返りもせず自転車を扱ぐ。
だが飯坂は負けじと全力で走りながら着いて来た。
見た目がひ弱のくせに追いつこうと必死なのである。
「ぎゃひっ!?」
すると朝の通学路に飯坂の奇声が響いた。
ドスンっと音を立てて彼の足音は消える。
だから思わず自転車を止めて振り返ってしまった。
すると飯坂は俺からだいぶ離れたところで倒れている。
どうやら派手に前から転んでしまったようだ。
何もない道で転ぶなよと突っ込みつつ彼の様子を伺う。
全く起きる気配のない彼を通り過ぎる生徒達は不審な目で見ていた。
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