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『…ったく』
「おれっ…おれ…」
『はぁ、分かったよ。分かったからそんな顔すんな』
俺は彼に目線を合わせるとあやす様に背中を叩いた。
すると彼は俺の胸元に頭を寄せて「うー」と唸っている。
飯坂には飯坂のペースがあって、それは俺にはどうしようもないのだ。
変人なせいで忘れてしまいそうだが彼は繊細な心を持っている。
『ちょっと来いよ』
「え…?」
俺は泣きそうな飯坂の手を引っ張り上げた。
そして立たせると先に歩き出す。
『早くしろ。授業が始まるぞ?』
「ははは、はいっ…」
すると飯坂は戸惑いながら後に着いて来た。
――着いた先は中等部のトイレだった。
戸惑う彼を尻目に自分のカバンを開ける。
そしてヘアワックスを取り出した。
「あの……」
『とりあえずその変な頭巾を取れ』
俺は飯坂を鏡の前に立たせると彼を促した。
すると彼は渋々その頭巾を外す。
「へ、へへ、変でした!?」
『お前自覚なかったのかよ』
「うう…」
すると頭巾に手を掛けた彼の顔が真っ赤に染まる。
確かに自分で変だと自覚があれば通学にあんなもん被ってはこないだろう。
そのずれた感覚が飯坂らしくて思わず笑ってしまう。
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