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「お願いします!!お願いします!!!」
『嫌だよ。放せって!』
「ダメです!頷いてくれるまで放しません!!」
ああ、ホント…こういうヤツはなんで無駄に必死なんだ?
苛立ちが募って強引に足を踏み出そうとする。
それでも彼は離れなかった。
まるで抱っこちゃんの様にしがみ付いて放そうとしない。
『いい加減に…』
年下だから甘くしてやってるのに向こうは遠慮が無かった。
もし同い年ならぶん殴っているところだ。
『自分ひとりでかっこよくなれよ!俺に頼るな!!』
「ダメですっ!梧桐(ごとう)先輩じゃなきゃ!!」
『なっ…』
なんで俺なんだよ!
意味が分からない。
第一に自分の名前を知っているなんて驚いた。
だから立ち止まるともう一度ため息を吐く。
『はぁ…』
見下ろせば小動物のように震えたガキが居た。
勘弁してくれ。
今日は厄日なのか?
怒る事すら面倒くさくてヤツの頭をペチンと叩く。
「いてっ」
『…ったく、とりあえず話を聞いてやるから体を離せ』
とうとう根負けをしてしまった。
だって暑苦しい。
男に抱き付かれて喜ぶ趣味はないのだ。
こんな風に見るからにガリ勉のオタク臭いヤツなら尚更。
「はははは、はい!!!」
すると彼は顔を真っ赤にしながら嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
やはり理解不能。
『やっぱ…』
「ダメです!ダメですー!!!男に二言はなしですよー!!!」
『………はぁ…』
俺は一抹の不安を抱えながら彼の話に耳を傾けた。
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