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考えてもわからない、いつからここに居るのかもどこで生まれたのかも名前も年齢も。けれど考える、思考をやめるということはつまり私が死ぬときだろう。
こんなところで死ぬものか、私を誰だと思っている? 百獣の王だぞ。私を敬え、奉れ、そして跪け!
しかし私の声は人間には届かない。ガォー、とひと際大きく吼えても私の言葉を理解し敬うものは居ない。
けれど私は吼えた、毎日吼え続けた。まるでスイッチが壊れた防犯ブザーのように何度も、何度もそれを続ける。
しかし私が一度吼えると、私の気を知ってか知らずか、観客は喜びに満ちた表情や感極まる声を発す。
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