第三章

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「結婚してるんでしょ?」 黙ったままの彼は、運転し続けた。 「子供もいるんだってね。私の事‥騙してたんだね。」 「‥ごめん。」 その言葉に、全部事実だったんだと、思い知らされた。 何度も愛してると言っていた。 私の手を握るその手は、暖かく、安心した。 一緒に居た日々も 一緒に過ごした時間も みんな‥嘘。 本当に愛しているのは、私ではなく奥さんで。 いつも一緒に居るのは、私じゃない。 裏切られた。 悔しくて、悔しくて。 私は泣くしかなくて。 抑えられない涙を必死に拭った。 「別れよう。」 そう言って、私は車を降りた。 本当はもっと聞きたかった。 奥さんの事や、言葉の事。 なにより、私への気持ち。
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