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子供達を連れ、暗い夜道を歩きながら、七海はまだ付き合ったばかりの時の事を思い出していた。
店の事務所でビールを瓶のまま呑んでた直哉…
あの頃は、こんな事になるとは思いもしなかった。
もっと早く気付いていたら…こんなに辛い思いもしなくて済んだかも知れない。
直哉じゃなく違う人と結婚していたら…
もっと幸せになれたのかも知れない…。
今更ながら昔付き合っていた人達の顔が浮かんで来る。
この人と一緒になってたら…
あの人と一緒になってたら…
そう考えているうちに涙が溢れて来た。
『ママ??』
七海の顔を見ながら心配そうに声を掛ける涼の声で我に返った。
(そうだ…直哉と結婚していなければ佳奈や冬華や涼は生まれて来なかったかも知れない…)
小さな歩幅で歩く涼を抱き抱え、七海は笑顔で答えた。
『ママは大丈夫だょ!涼と佳奈と冬華はママが守るから…』
子供達を安心させる言葉を選んだつもりだが、本当は自分に言い聞かせていたのかも知れない。
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