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   僕は、平凡である。  なんて某猫の最高さをくどくどと書き並べた文学小説的に言ってみたのには、実はマリアナ海溝並みに深い訳があるのである。取り敢えず、夏目さんに土下座を捧げます。そしてマリアナ海溝にスキューバダイビングしてみたい。嘘。土下座します。  とにかく、僕は平凡だった。  もっともそれは、ただ単に特に秀でた要素が見当たらないという事であって、万事に渡って平均を保持していた訳ではない。それはそれで凄いと思う。  つまりは、だ。  僕の感受性は人並みであり、ある事に対して過大な反応を示したり、またはある事に対して過小な反応を示したりする事は無い。  隣の加藤さんの所のミーちゃん(3)が欠伸をしながら首を掻いたからといって滑って転ぶ程に驚く事は無いし、逆に真向かいの宮崎さんの所のクロちゃん(8)が水爆によってゴジラになったのに「あっそ。それが何か? 僕は野良猫のタマちゃんを撫で回す事にしか興味が無いんですが」なんて絶対零度より冷めた反応をする事は無い。  うむむ、前振りが長くなった。  さっきも言った気がするが、つまりは、だ。  僕は、日本に於ける平均的な広さを誇るリビングに突如として侵入してきた、不審さ満天の来訪者に対して、隣の加藤さんの所のミーちゃん(3)が欠伸をしながら首を掻いたからといって滑って転ぶ程に驚く事は無いし、逆に真向かいの宮崎さんの所のクロちゃん(8)が水爆によってゴジラになったのに「あっそ。それが何か? 僕は野良猫のタマちゃんを撫で回す事にしか興味が無いんですが」なんて絶対零度より冷めた反応をする事は無い様に、人並みに驚いたのである。 「ふぁーお」  この世で一番華麗なる〝猫なで声〟が聞こえる。ちなみに〝にゃ〟とは言ってなかったりする。  ――それは、猫だった。  但し、間違い無く、それは来訪〝者〟であった。  人、なのだ。それは。  
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