特別

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「……なぜ……それを?」 深刻な面持ちを装いそう言う。すると、綾香は 「はいはい」 と、めんどくさそうに言うと、再び唇を震わせる。 「テスト前でも無いのに、慎二が勉強するなんて有り得ないと思わない?」 「超思う」 「そういうこと」 「あっ! なるほどね~」 と、おどけて笑ってみせると、隣で綾香もくすりと笑う。 外見的な欠点は無い。と、先ほどは言ったが、内面的な問題はあるのか? と、問われたら、これまた困り物である。 綾香は順風満帆な人生を歩んでるとは言えない。第一に父親がいない。俺たちがまだ小さい頃に、心臓の病気で死んでしまったからだ。 そのため、一人娘の学費を稼ごうと、身を粉にして母親は働いている。 時々、過労で倒れてしまうこともあり、見ていて危なかっしい。 が、そんな環境でも親の愛を一身に受け育った綾香は、今どきの高校生にしては珍しく、酒も飲まない。まず、法や人徳に叛くことはしないのだ。 それに、成績も上位レベル。何でも、親の気持ちに報いるため、大学進学を目指し日々勉学に勤しんでいる。大学では奨学金を貰って、親に負担をかけさせたくないってのが、綾香の口癖だ。 性格も柔和。誰とでも仲良くなれるクラスの女子の人気者。 欠点があるとしたら…… 「制服のスカートの中に短パン」 「何か言った?」 「何でもない」 「そお?」 「おう」
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