3人が本棚に入れています
本棚に追加
君達は座敷童を知っているだろうか。
赤面垂髪の5,6歳の小童の姿をした妖怪である。彼らはたいてい、間引きや飢饉で死んだ子供と言われているが、人を恨みはせず寧ろ見た者に幸せを与えるとも言われている。
そして私、真壁一郎が住むこの村にも座敷童の伝承が在った。寧ろ、座敷童の伝説がこの村を支えていた。たとえ飢饉になろうとも、彼らが私たちを救うとこの村の人間は信じ込んでいるのである。
だが、最近はその信仰も薄れつつあった。いや、老人たちは未だ熱狂的に信じては居るのだが……。若い男女は殆ど彼らの存在を信じようとしない。ここ1ヵ月ばかり飢饉がこの村を少しずつ蝕んでいるからであった。
日照りが続き、雨が降らない。
其れが故に、作物が取れず私たちは飢えていく。
勿論、誰の所為であるはずはないのだ。だが、老人は言う。座敷童の恩恵が足りぬのだと。それを受けるように若い男女も言う。座敷童などが居るなら此れを救って見せろ、と。
だが無情にも、座敷童は私たちを救おうとはしなかった。乾きは続き、作物は取れない。
そして、とうとう人々は狂い始めた。もし座敷童が居ないのならば、新しく座敷童を作ればよい。そうすれば彼らこそが私たちを助けてくれるだろう――と、叫び始めた。
そう、つまり彼らは、幼子を殺め新たな座敷童を作ろうとしているのである。
_
最初のコメントを投稿しよう!