3人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「ねぇ、限界突破ってしたらどうなると思います?」
「何が?何の限界?」
「人間の限界的なソレをですね今日突破しようと思うんですけど。具体的には飛びたいかなと」
「え、あ、うん。行ってらっしゃい」
「いや出来ればあなたにも来てほしいなって思ってるんですけど」
「え、ちょっと無理かな」
「いやいやそんなこと言わずに。人間なんて止めちゃいましょうよ。生きてたっていいこと無いでしょ?」
「いやあるよご飯おいしいもんあったかい布団気持ちいいもん。もう世の中いいことだらけ」
「そんなのまやかしですよ?すぐなくなっちゃいますよ?」
「うー、いいんだよ。思い出は残るんだから」
「んー……、じゃあいいです。すいませんでした、無茶なこと言って」
「いえいえ。……で、あなたは人間やめちゃうの?飛びに行くの?」
「あ、はい。やっぱり限界突破してみたいんで」
「そっかぁ、行ってらっしゃい」
「はい、行ってきます」
そう微笑んで、次の瞬間彼は近場の窓から飛び立って。
瞬間浮遊した後、真っ逆様に墜落死。
ぐちゃり、と肉の潰れる音が聞こえたような気がしたけれど、その幻聴は直ぐに風に流れて消えていった。
とりあえず、窓の下に居る肉塊と化した彼へと別れの一言。
「……いやいや、限界突破出来てないからね、それ」
(了)
最初のコメントを投稿しよう!