初めての旅行

9/9
4230人が本棚に入れています
本棚に追加
/342ページ
『あ~あ…明日は帰るんだね』 「楽しかった?」 『楽しいから帰りたくないんだ』 「でも、凜の仕事が始まるしね」 『うん……はぁ』 本当はもっとここに居たいけど、せっかく決まった就職だしね 「海に行ってみる?」 『うん』 二人で手を繋ぎながら、 砂浜に腰を降ろした 『すごい星空』 「綺麗だね」 都会では見ることが出来ないような満天の星空 『地上から見える星は 大気の関係で半分以下しか見えないんだって……全部みえたらどんな星空なんだろう』 「きっと怖いくらい美しい星空かもね」 『うん』 空を見上げる凜を見つめながら、やっぱり星空より凜を見てしまう自分に笑えた 『あっ、流れ星!』 「ん?」 凜は何か願い事をしていた 『あっ…間に合わなかったし』 「どんな願い事?」 『んと……これからも 朱雀とずっと一緒に居られますように……を三回』 「確かに間に合わないね」 『う~ん……』 「だけどきっと願いは叶うよ」 『だよねっ!あっ、また流れ星だ』 「クスッ」 『てかさ…じっと見てるとたくさん流れ星が見えるよ』 「星が一生を終えたんだね」 『流れ星はその後どうなるの?』 「そうだな…また新しい星に生まれ変わるんじゃないかな」 『そっか』 「私は生まれ変わっても、また凜を捜し出せるよ」 『俺だって朱雀より先に捜し出すもん』 「じゃ、競争だね」 『うん』 そんな話をしながら いつまでも二人で降るような星空を見つめていた そっともたれる凜の肩を抱きしめながら、たまにキスをして、いつまでも砂浜に座っていた 『朱雀……』 「うん」 『冷たい……』 「満潮だったみたいだね」 『あはっ』 海水が押し寄せて来て 服が濡れてしまった 「風邪ひくといけないから戻ろう」 『うん』 笑いながら立ち上がる きっとこの日の星空は 忘れない
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!