序章

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「お兄様、ソレはなんですの?」 私が尋ねると、お兄様は「ただの玩具(オモチャ)だよ」と答えた。 「へぇ」と短く返事をして、興味のなさそうな顔をする。 …―おもちゃ…こんなニンゲンが…おにいサマのおもちゃなのね。 その時は、ただ言われるまま生きていて、別に他人の事なんてどうでも良かった。 お兄様はよく町へ出ては『人売り商人』の所へ行って、ニンゲンを買ってくる。 そこに売られているニンゲンは"人間"ではなく、"商品"として扱われるそうだ。 お兄様はいらないニンゲンを買って来ては、玩具にして遊んでいて、使い物にならないニンゲンはすぐに捨てていく。 私も、"ニンゲン"を買って見たいと思った事がある。 でも、まだ「6才のお前にはまだ早い」とお兄様もお父様も言うの。 お母様は、自分をきれいにするのが忙しくって全然かまってくれない。 寂しくはない。 だってお兄様のおもちゃであそぶから、退屈ではない。 next
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