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 蝉が死んでいた。  空に腹を向け、ピクリともせずに死んでいた。  死んでしまった蝉を見て私は突然の虚無感に襲われた。  勉学に励めと言われ、それに従い生きてきた。  「期待している」その言葉に押しつぶされそうな自分がいた。  情けないったらありゃしない。  しかし、大学に入ればその束縛から逃れられる、ただそれだけを頼りに堪え忍んだとしても、人はいつ死んでもおかしくないものだ。  その我慢が、努力が報われる前に死が私に訪れたとしたならば、私はきっとこの蝉になるのだ。  蝉よ、私にはお前の鳴き声が嘆きのように聞こえるぞ。
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