人力振り子

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 「もしもし、これから私はそこで首を吊ろうと思うのですが、お嬢さんがどうも邪魔で首が吊れません。私があなたをどかしてさしあげてもよろしいのですが、どうやら色々と垂れ流しの状態でして、私なんかに触られるのもきっと嫌でしょうから、どうかそこをどいてください」  首を吊ったときに出たものだろうが、女の死体は失禁していた。  そのような状態をいくら死んでいたとしても見ず知らずの男に触られるのは嫌だろうという男なりの配慮であった。 「おやおやすみません。しかし、残念なことにもう私の体は動かないのです。どうか別の木を探してください」  葉で隠れた女の顔が申し訳なさそうに男に言った。  「それはあんまりだ!私は必死に探してこの木を見つけたんです。なのに他を探せだなんてあんまりだ」  男は女の申し出を激しく拒んだ。  「ですが、何を言っても私の体はもう動かないのです。もし、あなたが私をどかしてこの木で首をくくるなら、私はどこに居ればいいのでしょうか? 土の上ですか? 嫌ですわ。地べたに無様に倒れて蟻の餌になるのはまっぴらごめんです」
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