人力振り子

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 男の、心のどん底から染み出したような重く悲惨な言葉の数々を死体は黙って聞いていた。  時折、「まぁ…」などと相槌を入れたリなどして男の口から発せられる言葉を聞いてくれていた。  「今のままでは私は生きていく理由もありません…なんて三流ドラマのセリフみたいな言葉は吐きたくありませんが、まさにそう思うのです。生きていれば、私はまた罪を犯します。逮捕されても更正などはしないでしょう。だから私が今死ぬのは社会の為なのです」  「死ぬのが社会の為とは少し可笑しいですね。話してみたところ、あなたはまだ自分というものがまだ見えています。自分が見えている間は苦しくても生きるべきだと思いますよ。今死んでもきっと後悔なさいますわよ」  女の死体はまるで母親が子供に諭すような柔らかな口調で男に語った。  「そういうものですか? 私はまだ生きていますから死んだ後後悔するかどうかはよくわかりませんが……ならば貴女は完全に自分を見失ってしまい首を吊ってしまわれたのですか? そもそも、何故貴女は首を吊っていらっしゃるのですか? 貴女は私よりも若いように思われますが…」
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