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女が泣きやむまで、男はまた過去を振り返った。
自分が重ねた罪をふと振り返ってみたのだ。
被害者は決まって自分より弱い者を選んだ。子供、女、老人。
人並み以下の腕力しかない自分でも勝てるような相手だけを選んだ。
その中で最も印象に残っているのは月が見えない夜にちょうどこの辺りで襲った若い女だった。
仕事帰りか、やけに疲れた顔をして歩いている女だった。
背後から近寄り、声を出されぬように口を塞ぎ茂みまで連れ込み踏み越えては成らない一線を越えた。
あの女の自分を呪い殺さんばかりの憎悪を込めた目を忘れはしない。
鼓膜にではなく心臓に突き刺さるような声にならない悲鳴を忘れはしない。
どうにかしていた。
様々な罪を犯したが、もしかしたら唯一それだけに対してだけ男は罪悪感という物を感じているかも知れない。
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