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「ごめんね」
何十、いや何百回か針の音がした後で姉がぼそりと呟いた。
「私馬鹿でごめんね。あんたも私の事嫌いになったでしょ?」
震える声でやや自虐的に話す姉に何も答えられずに僕は押し黙っていた。
「ごめんね……。淳。ごめんね…」
ただ繰り返される謝罪に、僕は困惑していた。
矛先は違えど、この事に怒っているのは両親だけじゃない。僕だって怒っている。
それは、たとえ姉から謝罪されたからといって簡単に許せるものでは無かった。
「……これからどうすんのさ?」
重い口を開いて放った言葉は自分でも驚くほど冷たく、姉の上にずんとのしかかった。
「あいつはきっと姉さんのこと守ってなんかくれないよ。自分の事を守りたいだろうからさ。姉さんはいいように遊ばれただけだよ。悪いのは姉さんじゃない」
一言一言が槍のように姉に突き刺さるのがわかった。
しかし、それでも僕は言葉を止められない。きっと普段は明るく気の強い筈の姉が弱った姿が、僕の中のサディズムとやらを刺激したのだろう。
「姉さんは愛があったって言うだろうけどさ、それはまだ目が覚めてないからだよ。いや、もしかしたら自分でももうわかってるんじゃない? ただ、それに気づかないフリをしていたいだけなんじゃない?」
どんどんと姉が小さくなっていく一方で、僕の中のどす黒い影はどんどんと大きくなっていった。
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