-情趣-

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 終業式が終わった後、担任が紀の祖母が亡くなり葬儀があるとこっそりと教えてくれた。  学生の楽しみな夏休みが始まったが楽しみだったのは紀も同じだ。  気になって電話を掛けたが紀の声は堅く、人を拒絶する雰囲気を出していた。  本当に俺が出来る事は全くないのか。模索しても見付からなず、紀からの連絡を待つしか出来なかった。  連絡を貰ったのは葬儀から2週間を過ぎてからだった。電話先の紀の声は明るかった。わざとそうしているのではないかと思った。  連絡を受けた次の日に紀と内田、笹原がバイト先の本屋に来た。  久し振りに見た紀は、元々スレンダーな体型がまた痩せて見えた。 「エプロン姿の洸太超笑える」 「…そんなに変か?」 「なんか不思議」  笑顔の紀が痛々しい。本当に笑っているのか怪しく、笑顔が張り付いているようにしか感じない。  キラキラ輝く瞳は淀んでいるように見える。  大丈夫か?と聞くのも白々しく、いつも通りの態度を取ってしまった。  3人は雑誌等を読み漁り、内田と笹原はコミックスを買い、紀は何も買わず店を出て行った。  してやれる事が見付からない。  ふと花火大会に誘われた時の、拗ねた顔を思い出した。紀が1番楽しみにしていたのは、「友達と見る」花火を見たかったのかもしれない。  バイトを少し早めに切り上げれば間に合うかもしれないと思い店長に頼み込み7時までにして貰った。  花火大会当日、休憩中に紀に電話すると電源が切れているのか通じない。笹原に電話を掛けてみる。 『島野なら今日は用事が出来たって。家族で伯母さんとこ挨拶しに行くって。元気そうな声ではいたけど…』  俄に信じる事が出来なかった。家族はどうか知らないが、紀は1人でいるような気がした。  7時になると直ぐに切り上げ、店長に呼び止められ花火を貰った。小さな子供が喜びそうなお粗末な物だが花火は花火。紀と会う理由が出来た。  慰めの言葉をいくら探しても見付からないのは、大切な人を亡くした事がまだない。紀の気持ちはきっと分からない。  俺が出来る事と言えば、しょぼい手持ち花火を持って遊ぼうと誘う事だけ。  少しでも楽しめればいい。欝陶しいと言われようが、そうする事しかできない。
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