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父親が選んでくれた東京の専門学校を卒業して、ヒロはそのまま東京で店を構えた。
金があるって素晴らしいっ。
「ヒロ~。」
「え、何?」
「また赤字だぁ!」
「…はは。」
「笑ってる場合かぁ!」
正直、商売って難しい…。
専門学校で知り合った四人で開いた店は毎月赤字。
勉強出来たって何も役にたたなかったし。
「つーか笑うしかないって。ヒロは正しいよ。笑って誤魔化せ。」
「現実を見ちゃダメ。」
「お前ら二人は呑気すぎるんだよぉ!」
「何騒いでんの?煩いんだけど。」
「うわぁー!聞いてよ!今月も赤字なのにこの二人ったらぁ!」
「あぁ。その言葉先月も聞いたわよ。違うこと言えないのかしら。」
「言えないよ!赤字なんだもん!」
「まぁ。確かに何とかしないとね~。」
「何とかって!?」
「んー…。あ。ソコの二人。女の子ナンパしてきなさい。」
「えっ。」
「俺は!?」
「アンタはビラ配り。」
「えー!」
「明菜はこぇぇなぁ。」
「うん。」
「翔ちゃんよく付き合ってるよなぁ。」
「翔ちゃんはマゾだもん。」
「あぁ。」
‘ソコの二人’は店の近くの駅でダラッとする。
「ナンパって…詐欺じゃんなぁ?」
「いやー…。勝人の好きな子ナンパすれば問題ないと思う。」
「何言ってんの。俺はヒロ一筋。」
「いや、いつも言ってるけど俺ゲイじゃないから。」
「じゃあレズ?」
「だーかーらー!」
「マジなのになぁ。男とか女とかじゃなくてヒロのこと丸ごと一個で好きなんだけど。」
「…う…いや。騙されないからっ。」
「いや騙してないし。」
正直スッゴく嬉しい。
全部知ってる奴が好きだって言ってくれること。
何より自分が好きな人。
しかもシツコイ。
「お互い好きなのに結ばれないっておかしくねぇ?」
「誰が好きって言った!」
「ん?だって俺、女心チョーマスターしてるもん。」
「マスターって…。」
ガックリ力抜ける。
「いつになったらいいの?体も女になってからとか?」
「っ…。」
当てられたっ。
「そっか。じゃあ赤字はマズイか。よし、やるか。取り合えずナンパ。」
勝人はやる気になる。
「どの子がいーかなぁ…。」
勝人が周りに目を向けるのでヒロも女の子を見る。
どの子に自分達の服を着て欲しいか…。
「あ…。」
人ごみの中でヒロは知ってる顔を見付ける。
「え。ヒロ?」
勝人を置いて走る。
懐かしい顔!
「待って!」
ヒロは見つけた女の子を掴む。
ヤッパリ!
「えっ?なんっ…。」
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