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「…倍率低かったから。」
「…ナオちゃんて、勉強できないほうなんだ?」
「嫌いです…。」
「だよね~。素直でいいね。」
「…ヒロ…川、さんは、勉強好き?Kが、先輩はいつも勉強してるって言ってましたけど…。」
「まさか!好きなわけないでしょ。受験生だから勉強してるのは当たり前。」
勉強は…他人より好きだ…。
この時間より。3と話してるこの時間より、勉強してたほうがどれだけ楽か…。
「受験…。やだな…。」
「大変だよ~。ナオちゃんもすぐに受験生だよ。」
「入学したばかりなのに…。」
「本当にすぐだから。覚悟しておいてね。あ。なんなら俺、皆の勉強見てあげるよ。ナオちゃん達が受験生になる頃には遊びまくりの大学生だし。」
「いーですね…。」
「あ。でも俺、無事大学受かったら東京だ。ごめん。」
「まさか……東大?」
「当たり。」
ヒロはにっこり。
「…知らない世界だ…。」
東大行って、何になろうか。
何にでもなれる。
なりたいものなんかないから。
ならなきゃいけないモノなんか無いから。
「ナオちゃんは…将来何になるって目標あるの?」
「……先生に…。」
「そうなんだ。いいね。」
ヒロは羨ましく思う。妬ましくなるのを隠して笑う。
「なれたらいいんですけど…。」
弱々しく自信なさげに3は答える。
「先輩は…?」
「さぁ?俺何でもなれるだろうし。金持ちになりたいね。」
「あはっ…。」
「この年で夢あるの凄いよ。皆あるのかな?」
Kのことを狙って聞いた。
「さぁ…?あ。Kは医者になりたいって。…言ってました…。」
「は?マジで?」
3は素直に教えてくれた。
しかも、意外。
何も考えて無さそうなのに。
「何で、医者?似合わねぇ…。」
「…はい。」
「ねー。あ。ウチの親父医者だよ。修行させるかな。」
「医者なんですか…?じゃ先輩も医者に…。」
「うん。それもありだな。」
それから毎回。帰りは3と話した。
…初めはKの話を聞くため。
補習をサボって一本早い電車に乗って帰れば3は必ず居た。
何で居るかなんて気にしなかった。
Kのことを話す人。
それ以上は求めなかった。
求める気がしなかった。
他人に興味は無い。
ただ、楽しい。
「ねーねー。ナオちゃん。アルプス一万尺しよっか。」
「急ですね。」
降りる駅が近くなると電車の中は空いてきて、何しても気にならなくなる。
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