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3が恥ずかしそうに、呆れながら笑ってヒロを向く。
黙っていると思考は黒くなるから話をする。
頭の中に閉じ籠ると黒く腐ってしまいそうになる。
誰か爆弾でも持って乗って来てくれないかな。
今なら被害も少なくて済むし、3も居るし。
死ぬ時、知り合いが居るって心強いんだろうな…。
普段、風景なんて興味ないのに電車の窓から見える青々とした田んぼを見ると、キレイだって思って、それからその田んぼから地球が割れる想像をする。
皆で死んでしまえば、自分が死にたいって考えてたこと、バレなくて済むし。
黒くなる一方の思考を止めて、どうでもいいことを3とする。
「チョー高速でね。アルプ一万じゃーこやーのうー。あー…。」
「えーっ…?」
ヒロは素早くアルプス一万尺をやる。
歌は途中から無し。
滅茶苦茶早くやることに燃える。
トロそうな3が意外とついてくる。
「あー…ヘイ!」
「先輩…速すぎ…。」
「ナオちゃんがこんなに速く動けるとは思えなかったな。」
「動けますよ…。」
3は恥ずかしそう。
嫌みも言われても仕方ないって諦めて受け止めてる。
「Kに鍛えられたんです…小学校の時、アイツ一人でアルプス一万尺にハマって、付き合わされて…。」
「ふっ。バカ。」
想像できる。
皆にアルプス一万尺しようって言って、ウザがられるK。
Kに言われて断れなくて付き合ってしまう3。
「Kには負けたくないなぁ。もう一回ね。」
ヒロは3の手を取る。
ぷにぷにして赤ちゃんみたいな3の手。
「…やわらかいね。」
ヒロは素直な感想を漏らす。
「すいません…。」
3の恥ずかしそうな声は聞いてなかった。
ただ、女の子ってやわらかいんだって思い知らされて、3の手に釘付けだった。
「脂肪、俺に頂戴?」
「あげれるものならあげたいです…。」
「あは!」
電車の中で、色々。
小さい頃のKの話を主に。
あとは、3の持ってたティーンズ雑誌を一緒に見て。
服や、メイク。
「こういうの、ナオちゃん似合いそうね。」
チェックのバルーンワンピース。
優しそうなイメージ。
「…こういうの太って見える…。」
いや、もう遅いから…。
「胸の下で絞ってあるからそうでも無いよ。ナオちゃん顔が甘いからフリフリしてんのとか、リボンとか似合いそう。」
正直に見極める。
いつもTシャツにジーンズの、素っぴんの3に、頭の中で雑誌の服を着せてみる。
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