綾女の記憶①

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「いち、に、さん」と哺乳瓶に粉ミルクを入れた。 ポットがあったから、お湯を入れて、シャパシャパと振ってミルクの完成。 「マブちゃん、ミルクだよ」 と言って、飲ませようとしたまさにそのタイミングで母が帰ってきた。 「今、ミルク、飲ませるの」 ちゃんとお姉さんしているよ、という自負で。 ーーーーー 「あの時は、間一髪だったわ~」 昔話をした時に母が言った。 ポットのお湯、そのまま使って、それから水道の水で適温まで下げるということを忘れていたのだった、綾女は。 そういえば、母は水で冷ませながら手の甲にミルクを落として丁度いい温度になったか確かめていたっけ…。 今でも綾女はゾッとする。 熱いミルクを飲ませていたら・・・と思うと。 この「間一髪」で 「私たち家族に危険が起こることはない」 もしくは 「危険直前で何かによって守られる」 とでも確信したのであろうか、その後も3歳児と0歳児の留守番は続いた。 ずっと、ずっと。 二人が独立して家を出るまで・・・。 母は、思うがままに趣味の世界を走り回った。
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