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真文の記憶①
今思えば、アヤミちゃんは私の母親代わりでもあった。
私が保育園から帰る時、園庭で「さよなら」の会になると門の外にアヤメちゃんが自転車で迎えに来てくれていた。
「3数えるうちに後ろに乗らないと、置いて行くよ!」
といつも、なぜだか怒っていたが、置いて行かれるのがイヤで頑張って3までに乗った。
私は、ちょっとアヤメちゃんが怖かった。
でも他の友達はみんなママやおばあちゃんが迎えに来るのに、私の場合はアヤメちゃんだったから、言う事をきかないと一人になってしまうと怯えていた。
それで二人乗り自転車で、そのままどこに行くかというと「耳鼻科」だった。
私は慢性的な鼻炎だったので、毎日のように鼻に湯気みたいのを入れるため通っていた。
耳鼻科じゃない日は歯医者だった。
その頃は、今みたいに「予約」とかなくて、歯医者はいつも混んでいて1時間は待った。
これは私だけじゃなく、時々はアヤメちゃんも治療していたので、アヤメちゃんが「ただの保護者代わりの付き添いの姉」だけじゃなくなる。
そういう日はなぜだかホッとした。
よく考えてみると、アヤメちゃん、小学校2年生だったのだ。
アヤメちゃんの存在。
姉というより「絶対的存在のご主人様」のような感覚をいつも持っていたのは、こういう背景があったからじゃないかと思う。
でも「ご主人様」がアヤメちゃんで「家来」みたいのが私で、いつも頭が上がらなくて、何となく怖くて、後ろについて歩いて・・・・・・そういう関係は今でも何となく、いやハッキリと残っているんだけど、あんなにいろんな事をしてくれたアヤメちゃんに対して「私は家来」なんて思っていたこと・・・
少し、悔やんでいる。
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