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―11:03 湊アクアランド・中央広場
ボクたちは勘違いをしていた。
『太陽が真上に達する時』という一文は太陽が描かれた気球が中央広場の真上に来た時ということ。
『水上のシンボル』とは湊アクアランドじゃなく広場の噴水。
辺りは騒然として混乱している。
「遅かったみたいだね」
「幸永さん…」
「大丈夫?怪我は?」
「大丈夫…です」
爆発の威力は凄まじかったけど、幸いにも死傷者はいない様子…
「痛いよ~」
「うぅ…」
「こっちに怪我人がいるぞ!」
いや…怪我人はたくさんいる。
噴水の爆発で飛び散った破片が、周りの人たちに当たったんだ。
どうしよう…ボクも腕が痛い。
「う…っ」
「やっぱり…怪我してるね」
「すみません…」
「安静にしてて。誠也くん、幸人たちをお願いしてもいいかな?」
「はい、分かりました」
こんな時に何も出来ないなんて…きって真悟くんだったら…爆弾が爆発する前に気づいただろうし、お客さんを避難させたと思う。
ボクは…何も出来ないままだ。
あの頃から何も変わってない。
幸永さんに守られるだけなんだ。
「…やしい…」
「幸人…?」
「誠也くん…悔しいよ…っ。
肝心な時に何も出来ないなんて…こうして見ているだけなんて…
ボクは…何も…出来ない。
悔しくて…自分が情けないよ…」
「……幸人は偉いよ。真悟くんの代わりをしようとして一生懸命に頑張っていると思う。
でも、幸人は頑張りすぎだよ。
力みすぎて周りが見えなくなっているような気がしてならない。
幸人は何でも背負いすぎだから、少しは僕たちにも分けてよ。
痛みも苦しみも分け合えば…その分、負担は軽くなるからさ。
一人で何でも抱えないで。
僕たちは仲間なんだから…ね?」
「誠也くん…」
「幸人くんが動けない分は、オレたちがカバーするから大丈夫!
幸人くんは、そこで休んでて!」
「敏樹くん…」
そうだ…ボクは一人じゃない。
けっして、孤独なんかじゃない。
「…ありがとう…」
「水臭いよ」
ボクを支えてくれる仲間がいて、一緒に笑ってくれていることが、こんなに幸せなことだなんて…
ボクもじっとしちゃいられない。
「警察だ!落ち着いて!」
「伊達さん…!」
「おぉ!お前ら…!」
ボクは伊達さんを呼び寄せた。
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