第17話 プロローグ

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子供の頃に見た大きな船。 幼い俺の心に焼きついている。 「竜一、どうだ~? お父さんが設計した船だぞ~」 「すごーい!おっきいね!」 父さんの設計する船は、大きくて独特の模様が入っていた。 幼い俺には読めない漢字だった。 「あれ、なんて読むの?」 「あれは…『みなと』って書いてあってパパのお得意さんだよ。 社長さんから直々のお仕事だ!」 「なんだか、スゴいね!」 「これで苦しい生活ともサヨナラできる…もう…辛い思いをさせることもないんだよなぁ…」 父さんの目から、ひんやり冷たいものが俺の頬に落ちてきた。 その時の俺は、どうして父さんが泣いていたのか分からなかった。 でも、その涙を拭っていた。 「ありがとう」 「いやぁ、永瀬くん。ご苦労様」 「きよ…湊社長!この度は…」 「そんなにかしこまるな。 お互い高校からの付き合いだし、同じボート部だっただろう? 昔みたいに清志郎でいいよ。 その代わり私も洋一と呼ぶがね」 「しゃ…清志郎。ありがとう」 その時、湊清志郎という男に例えようのない不信感を抱いた。 子供ながら湊を警戒して隠れた。 「洋一の子供かな?」 「あっ…息子の竜一です。 ほら、竜一。挨拶をしなさい💦」 「…こんにちは…」 「可愛らしいなぁ!」 目を見れば分かるほど、その言葉には心が込もっていなかった。 この男は何を考えているのか… それからしばらくして、いよいよ父さんの船をお披露目する日。 「いいかい、竜一。パパはえらい人たちに挨拶して来るから、 ここで大人しくしてるんだよ?」 「わかった」 「えらいね、竜一」 父さんは優しく笑って、俺の頭を撫でて舞台裏へ向かった。 しかし、それが俺が父さんを見た最後の姿になってしまった。 「パパ!パパ!しっかりして!」 「おい!息してねぇぞ!?」 「パパ…」 「洋一…!頼む…洋一を…っ」 その場の誰もが、溺れた父さんを心配していたにも関わらず… 俺が見た湊は口元を両手で押さえながら笑っている姿が見えた。 もしかして、あいつが…? 湊は父さんの葬式にも顔を出し、遺影を前にして泣いてみせた。 あれも全て演技だと思うと… 腹の底から怒りが込み上げた。 いつか殺してやりたい。 父さんの仇を討ちたいと思った。
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