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寒い、まだ春にもなってない季節に風が冷たくて、思わず身震いしてしまう
何をするでもないし、約束とかしてなくて、でも洸兄に会いたかったから、家に来てしまった
でも、ドアには鍵が掛かっていて、留守だった
どうしようか…お仕事かな……
携帯を取り出しかけようか迷う
もし忙しかったら……
暫く携帯と睨めっこしていたらいい加減手がかじかんできた
声……聞きたい……
手は、無意識にボタンを押していた
コールが鳴る、あぁどうしよう…切れない…
「もしもし、ケン?」
「っ!!ぁ…」
出てくれた、聞きたかった声…
思わず声が出なくて焦る
「どした?」
「や…ごめんねいきなり、洸兄仕事?」
「うん、今終わったけどね…それより…」
今どこ?
そう言われて、目をパチクリさせた
いきなりなんなんだろ…なんて、頭に疑問符を浮かばせれば洸兄は真面目な声で、
「声、震えてるし…風の音がする」
「え……」
なんて言い出して、そういう事かと納得すれば正直に言ってしまおうかと思う
何時だって、敵わないんだ
「えと…洸兄の家、の前」
言ってしまえば鼻を啜り冷たくなった手をポッケに入れて、暖まるのを待つ
「えっ!?鍵掛かってるでしょ?ちょっ…そこ動くなよ?絶対すぐ行くから!」
待ってろ
慌てた声に少し驚くも、走ってるのかそんな気配がした
「うん…」
取り敢えず頷いて、帰りを待つ
良い子だ、と通話をきられれば携帯をポケットに入れて来るのを待つ
あんなに慌てて急いで、それだけで嬉しくて、暖かい
待ってるから、早く来てとドアの前に座り込む
来たら思い切り抱き着こうと楽しみにしながら…
早く来て、暖めて?
(次の日の贈り物を、俺は知らない)
+END+
それは銀色に光る、証
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