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さぁ、と…血の気が引く音がした
連絡を受ければ、震えたアキの声
震える自分を叱咤しながら急いでマスターのバーへ走る
何で…何でこんなっ…
大事な時に、俺は居ない…!!
「ケン!!」
バンッと大きな音を立ててドアを開ければ、奥にあるソファに寝かされてるケンがいた。
服は裂かれて血がべっとり付いてて…指先が…全身が冷えていくのが分かった
「洸、しっかりしてください」
「…白銀……」
冷や汗が頬を伝う
凛とした声にハッとして、白銀の顔を見る
疲れたような顔…治癒したんだ…
「傷も治したし、血もそれ程流れてないから…大丈夫だよ」
マスターが、安心させるように言った言葉に少しだけ強張りが解ける
俺…緊張してたんだ…
「生きてる…」
良かった、とケンの側に向かいしゃがみ込む
そっと頬を撫でる、いつもより低い体温が怖い
「では、帰りましょうか。後は洸に任せましょう」
イスに座って寝てしまったアキを抱き上げてアヤちゃんに促す
コクンと頷いて、3人は帰って行った
起きたら連絡しないとね…
アキなんか疲れて寝るまで付き添ってたみたいだし
マスターも気を利かせてカウンターに戻ってった
脱がされた服を見て、着替えさせて貰った服を見る
「ちょっと大きいね、起きたら送るから…家に帰ろう」
先程よりマシになった顔色にクシャリと頭を撫でる
「…お願いだから、起きてまた…洸兄って呼んでよ」
あの太陽のような暖かな笑顔を見せて
はにかみながら好きって言って
俺を……独りにしないで
「ケン……」
「………んぅ…」
「!!」
か細く唸る声、だけど俺にはハッキリと聞こえた
驚いて見つめれば、震える睫毛
「こーにぃ……?」
ぼんやり見つめられて、名前を呼ばれる
「良かった…ケン…!!」
ポタリとソファに染みができた
ケンはゆっくり俺の頬に触れて、伝う涙を拭う
「俺…ごめんね、洸兄…」
「うん…でも今は、謝らなくて良いや」
堪らずに抱き締める
さっきより高い体温に、力が抜ける
「…俺ね、死ぬんだって思った…そしたら洸兄が浮かんで…死ぬなら洸兄の側が良いって思ったんだ」
「ケン…」
怖々と背中に腕を回して、キュッと服を握り締めて呟いた言葉は、切なかった
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