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例えばそれは蕾のような
「はぁ…」
賢吾は朝からこんな調子で溜め息ばかりついていた
1人屋上に風を感じ目を閉じる
何故悩むのか、多分それは本人が一番分かってる
幾ら馬鹿でもそれくらいは自覚するものだ
思うのは、年上の黒髪の…
「洸兄…」
ボソリと小さくその名を呼ぶ、昶にも綾にも一応打ち明けた
かなり相談にものってもらった
でも、悩みは尽きぬものである。想えば想う程溜め息が出る
「帰ろ…」
立ち上がりその場を離れて下に降りる
放課後の少し曇天な空を見上げて、考えながら歩けばふと立止まる
キョロキョロ辺りを見回しあ、と小さく口を開ける
「ここ…洸兄の家の近くだ…」
ボンヤリ歩いてたせいか、足は無意識に向っていたらしい
賢吾は苦笑した
こんなにも、焦がれているのかと
「ケン…?」
「!!」
聞き慣れた声に振り返る
そこにはやはり、想い人が立っていて
無意識にホッとする
「洸兄、どしたの?」
「どしたのじゃ無いでしょ、こんな物騒なとこに1人で…危ないよ?」
近寄ればクシャリと髪を優しく撫でられ、心地良さに目が細まる
「うん、なんか来ちゃって」
苦笑すれば撫でられたとこにそっと触れ
それさえも嬉しいのだと実感してしまう
ポツリ
鼻先に何か冷たいものが当たる
触れればそれは水で、雨だと理解すればザーと勢い良く降り始めた
「げっ、雨!?」
慌てる洸は上着を脱ぐとそれをフワリと賢吾に頭から被せた
キョトンとすれば腕を掴まれて、ニコリと微笑み
「走るぞ?」
「わっ……」
そう言って、走ればどこかの屋根に雨宿りをすることになった
コケないようにと配慮しながら走ってくれる洸に、賢吾は余計胸を焦がした
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