第一章 ロイヤルミルクティーとスコーン

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 小説を読み始め、挿し絵入りのページに差し掛かったところで、先程注文を聞いたウェイトレスがヒカリの元へやってきた。言いながら、丁寧にテーブルの上に白く丸いティーポットとミルクが入った器、一杯目の紅茶がいれられたティーカップ、五種のスコーンが載せられている大きな皿を置いてゆく。 「お待たせいたしました、ロイヤルミルクティーとスコーンでございます。ごゆっくりどうぞ」 「はい」  律儀に応答するヒカリに、二年ほど前からの馴染みであるウェイトレスは、ニコッと笑んだ。 「では、失礼いたします」  ヒカリは一旦小説を閉じた。テーブルの端に置かれている砂糖入れから、角砂糖を一つ取り出し紅茶に入れ、ぐるぐるとスプーンで紅い液体を掻き回す。角砂糖の姿が消えたところで、ミルクを静かに垂らす。くるくる渦巻いている紅茶に、まろやかなミルクが加わり、優しい色になった。ヒカリは一口それに口を付け、ついでレーズン入りスコーンに手を伸ばした。ヒカリの手の平の半分ほどの大きさのスコーンを、両手で半分に割る。そして更に半分に割り、四等分にした。一口大の大きさにしたスコーンを口に放り込みながら、再び小説を開いた。  その時だった。
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