第一章 ロイヤルミルクティーとスコーン

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 ヒカリの問いに、青年は数秒間沈黙した。ヒカリの瞳に、やや剣呑な光が宿った。 「用が無いなら、話し掛けないでくれませんか」  ヒカリはつっけんどんに言い放った。その素っ気ない態度に、青年は思案するように俯いた。他人に対するこの冷たい対応は、ヒカリの防御のための手段だった。なるべく他人とかかわらないための。だから、ヒカリは会社でもほとんどの時間一人だ。生きていく上で必要以上に傷つきたくなければ、自分から進んで孤独になればいいのだ。  ヒカリが青年に対し、背を向けようとした時、青年が言った。 「話し掛けたい、という用事があります」
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