第一章 ロイヤルミルクティーとスコーン

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 ヒカリが身に纏う洋服は、ヒカリ自身の完璧な自己満足と、これから赴くカフェに相応しいものになるよう選んで買ったものばかりだ。女性用のファッション雑誌では、流行を追い掛けたデザインの洋服が数多く取り上げられ、『今期は〇〇がキテる!』『最強、モテカワ〇〇!』等々記載されている。だが、ヒカリはファッション雑誌を眺める事自体は楽しいし好きだが、進んで流行の洋服を取り入れたりはしなかった。そこはヒカリの大きなこだわりで、徹底的に己の好きなものにだけ執着した。そうしなければ、自分の精神を守ってくれる、ヒカリ自身の世界にヒビが入るような気がしてならないのだった。今日チョイスしたこのパフスリーブも、シャンブレーのワンピースも、街中にあっても、ひっそりと隠れ家のようにたたずんでいるセレクトショップから購入したものだ。知る人ぞ知るマイナーなブランドで、店舗は日本に数えるほどしかない。勿論、そのブランドの洋服は、ファッション雑誌にも載っていない。  ヒカリは、自分に自信が無い分逆に、洋服やアクセサリー選びに力を入れた。それは、誰かに自分自身を見てもらうためではない。ヒカリが少しでも、自分に誇りを持つための欠かせない儀式なのだった。
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