第一章 ロイヤルミルクティーとスコーン

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 通行人と擦れ違うたび、ヒカリの耳に囁きが聞こえる。『ダサい』『ブサイク』……。それは過去にヒカリを傷つけてきた言葉たちだった。実際に言われているわけじゃない、言っていたとしても、自分の事じゃない、そう自分に言い聞かせ続け、ヒカリは毎週通っているカフェに到着した。  そのカフェは街中の大通りから、一つ裏にある古いカフェだった。クラシカルな趣で、落ち着いた雰囲気を醸し出している。建物は二階建になっており、随所に品の良い絵画や骨董品らしきものが陳列されている。ヒカリはそれら細々としたもの全てが気に入っており、一度カフェの中に入れば、一日中でもくつろいで、居座っているのだった。  日傘をたたみ、いつものように、木製の扉を取っ手を引いてカフェの中に入る。扉に付いたベルがカラカラと鳴り、マスターが『いらっしゃいませ』とヒカリに声を掛けた。
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