第一章 ロイヤルミルクティーとスコーン

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 カフェの扉を後ろ手に閉めると、もう其処は外界と隔絶された琥珀色の空間だった。窓から差し込む陽光は柔らかくとろけている。クリーム色の遮光カーテンが、強い夏の日差しを優しい光に変えていた。街の喧騒も途切れ、ヒカリはホッと息をついた。  このカフェはワンフロアの面積が小さく、一階に四人用のテーブルが三つに、二人用のテーブルが三つ、二階に四人用のテーブルが二つに二人用のテーブルが六つ、と席が少ない。ヒカリは一階のテーブルが満席ではないのに、二階へ向かう階段を上った。ヒカリは二階が大のお気に入りなのだった。二階の窓際のテーブルに着き、そこから外の世界を眺めるのが好きなのだ。
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