第一章 ロイヤルミルクティーとスコーン

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 二階を見渡すと、丁度窓際のテーブルが一つ空いていた。ヒカリは其処に足早に歩み寄り、椅子を引いて腰を下ろした。肩に掛けていたバッグから小説を一冊取り出し、バッグは、座っている椅子と自分の腰の後ろの間に置いた。オーダーを決めようと、テーブルに置いてあるメニューを眺める。飲み物はロイヤルミルクティー、食べ物はスコーンにした。このカフェのスコーンは、一皿に五つも載せられている。そして、その一つ一つの味が違う。スコーンの種類は、プレーン一種の他に、レーズン、胡桃、アールグレイの茶葉、胚芽を混ぜた四種。これだけでおなかがいっぱいになる。 「ご注文お決まりでしたら、どうぞ」  ぼんやりとメニューの写真を見ていると、横からウェイトレスの声が掛かった。 「え…と、ロイヤルミルクティーと、スコーンお願いします」  ウェイトレスが注文を反復し、かしこましまりました、少々お待ちくださいませ、と言い、きびきびした動作で去って行った。
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