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一人の女が煙管を咥えて脇息に凭れている。着崩れた着物でいて尚品が漂い、後れ毛の流れる首筋からは何とも言えぬ色香が溢れていて。
「吉三…あんたの用意したこの家、気に入ったよ。成の良い彼の家を傾けたっていう妾くずれの悪女なあたしに相応しい…。」
「流石はお七…いつもながら見事な化けっぷりだな??」
吉三と呼ばれた男は襖に寄り掛かりながら目を女…お七に向けて一つ息を吐いて肩を竦めて見せる。
すると、お七はくすりと笑みを溢し、煙草盆に煙管をカンと打ち付けて流し目で言い切った。
「今日からあたしを毒婦のお七、そう呼んどくれ。」
凛とした声が室内に響き渡る。すれば、吉三はくつくつと笑いゆらりと歩み出し、片手を後ろ手に振って、消えた。
此れから始まるのは、どの様な男と女の物語か…。
先は、見えない。
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