第二章~召喚~

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呼び出されたアヴェンジャーの真名はアンリ・マユ…この世全ての悪と呼ばれる存在だった。 ……アンリ・マユ。 ゾロアスター教において、絶対悪の神と称された存在。 それは人に仇成す邪神だった。 その黒き魂を聖杯に注いだために、無色の力である筈の聖杯の中身は、人を殺す…という方向性を与えられてしまう。 例えば、金が欲しいと願えば、世界中の大富豪を殺し、財宝を奪うことで願いを叶えるということだ。 だが、それは違う。 少なくとも、そんなものは祖父さんも祖母さんも望んでいなかった。 当然、2人のサーヴァントであるセイバーも。 だから、破壊したのだ。 セイバーの持つ宝具、エクスカリバーで…。 「じゃあ、今回の聖杯はいったい?」 「似て非なる物よ」 俺の問いに答えたのは、祖父母でもセイバーでもなく…。 「なっ!?」 「イリヤ!?」 件の転入生、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンだった。 彼女は驚く祖父母の姿を認め…。 「久しぶりだね…2人とも、ずいぶん老けちゃってるけど」 穏やかな声で、そう告げた。 だが、その言葉に返す返事はない。 祖父さんも祖母さんも、まるで目の前に立つ少女の存在を信じられない……そんな表情で、イリヤスフィールを見つめている。 「お久しぶりですね、イリヤスフィール。まさか貴女が生きていたとは…思いませんでした」 「生きてた…だと語弊があるわ。私は2体目だもの」 「2体目?」 「そいつ…ホムンクルスなのよ」 混乱から復帰した祖母さんが、当然そんな事を告げた。 「ええ。前の私は既に朽ちてしまっけど…アインツベルンは再び私を聖杯戦争に投入したのね」 「じゃあ、イリヤはまた聖杯として…?」 「いいえ。さっきも言ったけど今回出現した聖杯は前回までの聖杯とは別物よ。……原理自体は同じみたいだけどね」
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