第二章~召喚~

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道場に響く打ち合いの音。 セイバーが特訓する、なんて言い出してから、既に1時間が過ぎようとしていた…。 「はぁぁぁッ!!」 打ち込んでくるセイバーは、まるで瀑布の如き連撃で俺に攻め込んでくる。 上下左右…。 もはや同時に打ち込まれたとしか思えないような剣戟が俺に迫る――! 「ちっ!」 いなし、流し、防ぎ、避け…全力で飛び退き、距離を離した。 だが、逃がさぬとばかりに、同じく全力で踏み込んでくるセイバー…。 「くそっ…!」 逃げられない。 そう判断し、真っ向からセイバーを迎え撃つ…! 左から右へ…。自身の渾身の一撃をセイバーの首筋目掛けて放った。 ――バシィッ! 防がれる。 まるで化け物だ。渾身の一撃を踏みとどまりもせずに軽々と弾いたのだ。 飛んでくる刺突を、弾かれた反動で避け、右足を軸にして駒のように一回転する。 右から左へ振り抜く…。 セイバーは未だに竹刀を戻しきっていない。ならば、俺の一撃は彼女の胴を薙ぎ払うだろう。 だが、そんな考えは…。 ――バシィィンッ! 後頭部に走った激痛により、意識と共にどこかへ飛んで行ったのだった…。 …………。 ……。 「なんというか……容赦がないな」 「ま、あれで宝具持ったら全力勝負になってるんでしょうね」 「止めてやれよ…」 「いいんじゃない?セイバー、久しぶりに活き活きしてるし」 凛の言葉に、まぁなぁ…と生返事を返す士郎だが……少し気になるところがあった。 セイバーのあの動き。 たしかにあれは全力勝負と同じ動きだった。 だが、何かがおかしい。 ……焦ってるのか? そりゃあ息子同然の色が、魔術師同士の殺し合いに参加すれば、焦るのは分かる。 心中穏やかではいられないだろう。 「うわ………あれ鳩尾に入ったぞ」 「というか、それでも立ってる色が異常よね」 「意識は飛びかけてるみたいだけどなぁ」 特訓と言う名の地獄は、まだまだ続きそうだった…。
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