第二章~召喚~

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深く深呼吸をして、構える。 対峙するは、ブリテンの赤き竜の異名を持ち、聖剣エクスカリバーの担い手たる最強の王…。 どう足掻いたところで、勝ち目は皆無だろう。 だが、そんな事は百も承知。 俺は祖父さんのような投影も出来ないし、祖母さんほどの天賦もない。 それでも……いや、だからこそ引くことだけはしたくない――! 「ッ!!」 駆ける。 最初の一手、セイバーの迎撃とその予測…その全てを無視して全力を以て踏み込む…! 放つは渾身の一撃だ。 振り下ろすデュランダルだが。 「ふっ…!」 弾かれつつも構わず、振り払う。 「まだっ!」 上下左右…。 セイバーのそれには遥かに及ばないものの、一息で放った四撃…! 「くっ!」 だが…それもセイバーには通じないらしい。 分かっていたことでも、これは骨が折れるな…! 手足に速度、耐久の強化魔力を施し、更に踏み込んでいく。 どこまでも速く…! 何よりも堅固に…! 『イメージしろ。成りたい自分を描くことが、強くなる一番の近道だ』 そう。 俺は成りたかった。 彼女に……いつでも真っ直ぐに歩いていく、セイバーのような人間に…! 「はぁぁぁっ!!!」 「しまっ…!」 振り抜かれるエクスカリバー。 だが、それに気付くのが遅かった。 その一瞬の間が、取り返せない程の失態…! 何とかデュランダルで防ぎはするが…。 「ぐぅっ…!」 吹き飛ばされた。 まるで打ち返された野球ボールのように、空中を飛ばされ…。 道場の壁を突き破って……庭へと着陸した。 「………く…」 目が回る…! 手足も神経が断線したかのように動いてくれない。 いや、それ以前にデュランダルも消えかかっている…。 ここまで、なのか…? 俺は、セイバーのようには成れないのか…!? 「ここまでです。多少は驚かされましたが、今の貴方では私には届かない」 まるで突き放すように言い放つセイバー。 ……あぁ、分かっている。 そんなこと、誰に言われなくとも分かっていたんだ。 それでも、そう成れたならどんなにいいかと憧れた。 だから…。
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