第二章~召喚~

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「――まだ……やれる…!」 立ち上がる。 限界に達した体は、それだけで意識を失いかねないほどの痛みを訴えてくる。 ――関係ない。 ただ、幸いなのは既に精神の感覚は麻痺しているらしい。 ――なら戦える。 立ち上がり、自らの身体状況の確認を行う。 左肩の骨折…いや、脱臼および右手親指の骨折。魔力回路並びに魔力は未だ健在。体力的には既に限界を越えており、脳は足りなさすぎる酸素を求めて運動停止を命じてくる。 「無駄です。その体では戦えない」 …そんな事は誰に言われるでもなく承知している。 それでも、俺は……消えかけているデュランダルを構えた。 例え体は負けても、その精神だけは負けることのないようにと…。 「……いいでしょう」 呟き、構え直すセイバー。 恐らく、一瞬でも気を抜けば、俺の体は半分に両断されるだろう。 ………体が震えた。 数秒後の自分。 エクスカリバーに切断された自分が明確に予測出来るためだ。 おそらく、これが本当に最後の一手になる。 セイバーとの距離は10数メートル。セイバーならば2秒で詰め寄るだろう。 故に、この勝負はその2秒で決する。 だがそんな事は頭にはない。あるのはただ…。 「行きます…!」 地を駆けるセイバー。それに応えて、俺も強く踏ん張った…! 1秒…。 駆け抜けてくるは流星。 人間では打ち倒すことはおろか、受け止めることも許されないだろう。 ……負ける。 風を切り、振り上げられた聖剣。 振り落とされる刹那…。 ―――ッ!? 何かが見えた。 それが正しいのかは分からない。 だが、その是非を確かめる事はせずに…。 「おぉぉぉぉッ!!」 駆けた。 セイバーの聖剣、その先に見えた物を目指し、一切の恐怖をかなぐり捨てて………全力で勝利へと踏み出す…! 聖剣は俺の左肩を掠り、地面へと吸い込まれる。 その位置こそが唯一許された回避方法だったのだ。 だが、まだ終わっていない。セイバーの脇を抜け、背後を取りはしたが……踏みとどまれずに、たたらを踏む。 「はっ!!」 「ッ!」 振り向き様に放たれた一撃をデュランダルで受け止めるも……やはり吹き飛ばされた。 景色が流れていき…。 蔵に続く扉を破り、壁に叩きつけられた。
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