第二章~召喚~

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「……ぁ」 壁に叩きつけられたまま、呻くように声を出す。 体はボロボロ、魔術回路と魔力はあっても、それを活用するハードがイかれてるのなら意味はない。 「………勝てないよな…やっぱ」 それは、わかりきっていた事だ。 人間では英霊に勝てる道理はない。 …それはいい。 別に勝てなくとも、きっとこの経験は、次に生かされてくるものだと、理解しているのだから…。 「――ぐっ…!」 感覚の麻痺した体を柱に預けて、ゆっくりと立ち上がる。 ギシギシと関節が軋む音が、やけに耳に煩い。 それでも、立てと…。 仮にここで体が動かなくなったとしても、今すぐに立てと……俺の中で何かが囁く。 「ぁ、がっ…!づ…くぅ」 ――痛い。 段々と神経が断線していくのが分かる。 既に右腕と左足は機能不全を起こしているのか、感覚がない。 『誰か…救護班を早くッ!…早くしてくれッ!!』 視界もおかしくなったらしい。 有り得ない物が視界いっぱいに映った。 赤い、小さな少女。 どうやら、俺は今その子に抱えられているらしい。 『早くしないとこいつが―――が死んじまうッ!!』 少女は叫ぶ。 まるで喚くように、泣き叫ぶように…。 聞いてるこっちが辛くなるような、悲痛な叫びに、思わず耳を覆いたくなった。 瞬間…。 「がぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 全身を魔力が逆流した。 先程とは比べ物にならない痛みが、体を蝕んでいく…。 ――その中で…。 ありえない幻を見た。 床に張り巡らされた魔法陣と、そこから現れようとする何か…。 その何かが女性だと気付くのに時間はいらなかった。 「――何、が…?」 訝る間にも、その女性は陣から完全に出現していた。そして――その瞳が、俺を捉えた。 「サーヴァント、アーチャー。召喚に従って参上したよ。……聞くけど、君が私のマスターかな?」 目が奪われていた。 彼女の存在、鈴のように響く声、そしてその美しさ。 ……初めての感覚だった。
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