第三章~弓兵~

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静まり返った庭。 先程まで戦闘があったなど信じられない程に静かだった。 もっとも、地は抉れ、壁も所々が破損しているが…。 「――くっ…!」 「セイバー!」 流石に疲労が限界まで達したのか、セイバーが苦しげに膝をつき、慌てて祖父さんが駆け寄る。 ……自分も久々に、しかも消費魔力が桁違いなアイアスを投影して疲れているだろうに…。 そんなことは、おくびにも出さず祖父さんはセイバーに肩を貸していた。 なら、悪いがセイバーは祖父さんに任せるとしよう。 「……シキ、危険です!」 セイバーは俺の意図に気付いたか…。 未だ土煙を上げる壁へと近付く俺を制止しようとするが…。 「大丈夫…」 あいつが俺のサーヴァントなら、間違っても危険なんてことはないだろう。 それよりも、アーチャーは無事なのか。 いくら直撃は避けたとはいえ、あのエクスカリバーが掠ったのだ―――左腕がなくなっていても不思議はない。 「……く…ぁ…!」 ――いた。 壁に背を預けた状態で、必死に痛みを押し殺して生きていた。 どうやら、五体満足でいられたようだが…。 「大丈夫か、アーチャー?」 ゆっくりと手を差し伸べる。 早いとこ手当てをした方がいいと思ったからだ。だってのに…。 「……ごめん、負けちゃった…」 「ッ…!?」 だってのに…なんだってコイツはここまで申し訳なさそうな表情で笑うのだろう? 「――召喚早々これだと…ッ…呆れちゃうよね…」 「…………」 腹が立った。 こんな表情をするアーチャーにもそうだが。 こんなときに気の利いた言葉が出てこない自分に腹が立っていたのだ。 それに、呆れたなんてそんなことはない。 少なくとも、あれはアイアス…いや、祖父さんがいなければアーチャーが勝っていた。 どちらに勝って欲しかった、というのはなかったけれど…。 それでも、お前は…。 「お疲れさん」 「ぇ?」 「うん、今回は負けちゃったけどさ…それはそれでいいんじゃないか?」 「負けたのに?」 アーチャーの問いに頷き答える。 すると、アーチャーは…。 「…変な子」 そう言って笑顔を見せたのだった。
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