410人が本棚に入れています
本棚に追加
「アーチャー」
祖父さんに肩を貸されながら、セイバーがこちらに歩み寄ってくる。
既に、アーチャーに戦う力は残っていないことを察してか、セイバーの目からは敵意がなくなっていた…。
「貴女はシキが召喚したサーヴァントでしょう?」
「…そうだね。そういうことになるかな」
「ならば剣を収めなさい。私は今回の聖杯戦争には関わりのないサーヴァントですし、私にはシキに危害を加える意思はない」
「でも、それを信じろ…っていうのは難しいんじゃないかな?」
「なぜです?」
「私が緊急で召喚された…っていうことは、マスター候補だった彼に生命の危険が迫ってたっていう意味なんだよ?」
その危害を加えたのは、間違いなく貴女でしょう?と、アーチャーは目で訴える。
とはいえ、もはやアーチャーに戦う力は残されていないのは明らかだ。
そもそも五体満足でいることの方が奇跡に近いのだから…。
だっていうのに、アーチャーは右腕だけで長杖を構え、その穂先をセイバーに向けている。
その時…。
『守ってみせる……今度こそ』
アーチャーから、そんな声が聞こえたような気がしたのは、果たして幻聴なのだろうか?
「……わかりました」
「セイバー?」
静かに、セイバーは一言だけそう答えて不可視の剣を収めた。
「ならばまず武器を引きなさい。戦うばかりではなんの解決にもなりません……それに」
言葉を区切り、深く目を閉じると、セイバーは頬を染めながら。
「……お腹が空きました」
なんとも場違いな…しかしセイバーらしい発言をしたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!