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いやに時計の秒針が刻む音が耳に煩い。
誰一人として口を開く者はなく、また、退室する者もない。
……俺が活路を切り開くしかないのか?
そう決意し、一度だけみんなを見渡した。
「……え~。とりあえず、だ」
発言と同時に一斉に向けられる目、目、目、目…。
合計にして8つの目に見つめられて、正直生きた心地がしない。
「まず、アーチャー。…セイバーは本当に俺に危害を加える事はない」
「どうして?」
どうして、と来たか…。
「息子に手を出す母がどこにいる?」
「………………」
アーチャーは答えない。
彼女はただ一点のみを睨みつけるように見つめ続けた後、不意に…。
「いるよ…」
短く、まるで辛い出来事を語るかのような声で呟いた。
「そんなのどこにでもいるよ。貧困に喘いでる国なら特にね……親が子を殺して、子が親を殺して…」
「アーチャー?」
思い詰めた表情のアーチャーの肩は、微かに震えていて…。
「ならば、貴女は生前に親を殺そうとしたことはありますか?」
「それは…」
「アーチャーのサーヴァント。私には信じて欲しい、としか言えない。無論、信じなくとも貴女の勝手です。ですが…」
そこで、セイバーは言葉を区切った。
その顔は、まるで慈愛に満ちた聖母のようでもあり…。
思わず、全身に鳥肌が立つ。
「私はシキを……シロウを、リンを、愛しています。この家族を愛しているのです。…もし仮に彼らを殺さなければならなくなったなら、私は自らの命を自らの剣で断ちましょう」
この想いだけは信じて欲しい…と。
それが、彼女が出した答えだった。
家族を斬るくらいならば、死んだ方がマシだと…一点の迷いもない瞳が、そう告げていた。
そこに籠められた真意は分からない。
ただ、アーチャーにも何か感じるところがあったのか、一度だけ目蓋を閉じた後…。
「信じるよ。その言葉……」
そう答えて、セイバーと笑い合った。
どうやら、一件落着と相成ったらしい。
二人の間に険悪な空気はなく、祖父さんと祖母さんも、ホッと胸を撫で下ろしている…。
刹那…。
ガキンッ!という音とともに、突然室内の明かりが消えた…?
「なんだ…?」
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