第三章~弓兵~

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「アーチャー!」 魔力をアーチャーに送り込み、彼女を見る。 …どうやら成功したか。 アーチャーはこちらを振り返るとウィンクを一つ飛ばして…。 「アクセル・シューターッ!」 複数の魔力球を飛ばした。 それはまるで意思を持つように各々飛翔し、オートマタを迎撃していく。 最前衛たるセイバーも、後方援護に気付いたか、残ったオートマタを一気に殲滅していった。 目が離せない。 視線が吸い付けられる。 それは刃と光の共演…。 斬り裂き、打ち砕き、破砕する。 互いが、まるで競うようにして迫り来る敵と舞い躍る…。 さながら、居間は舞踏場か。 セイバーという踊り手。アーチャーという踊り手が、目の前で軽やかに、しかし厳かに舞っていた。 いや、踊り手は2人だけではない。 「士郎!無理するんじゃないわよ!」 「こっちの台詞だ!」 宝石と双剣。 我が祖父母もまた、舞い躍るように戦っていた。 敵を貫くは赤く輝く宝石。 敵を四散させるは双剣。 過去の聖杯戦争を勝ち抜いた魔術師もまた、踊り手としてこの舞踏会に参加している。 「これが……聖杯戦争…」 呟いた。 マスターが、サーヴァントが互いに協力しあい、勝者を目指す。 ただ、一つ残念だったのは…。 俺は、武器が無ければ戦えないという、その一点だった。 …………。 ……。 …。 ほどなくして、戦いは終わった。 キャスターであろうサーヴァントも撤退したのか、その気配はない。 結局、その場には人形達の残骸だけが残り…。 「掃除が大変だな…」 という祖父さんの呟きが、妙に場違いに感じられた。 「シロウ、私達も手伝います」 「そりゃ助かる。じゃあ、セイバーと凛は廊下、儂と色が居間でいいか?」 「あいよ」 祖父さんの指示に従い、それぞれの分担場所へいく。 と、なんとも暇そうなアーチャーが視界に入った。 「アーチャー」 「ん、なにかな?」 首を傾げたアーチャーに箒を手渡す。 「手伝えよ。お前も、多分今日からここで暮らすんだし…言ってみれば家族みたいなもんだ」 「家族…」 「ああ。だから、手伝ってくれ」 俺の言葉に少し戸惑うような素振りを見せたアーチャーだったが、やがて…。 うん、と笑顔で答えてくれたのだった。
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