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第四章~君のいる日常~
その晩、夢を見た。
夢の中の俺は、炎の中に立ち、複数の誰かと対峙していて…。
なんとなく、彼女らは、夢の中の俺にとっては大切な人達なんだろうなと……そう思う。
『■■■、こんなことはやめよう?』
その中の1人が、そんな申し出をしてきた。
……だが、頷けない。
いや、その言葉に頷く訳にはいかなかったのだ。
守りたい人がいて、その守りたい人を守るための最善の方法が、これだったのだから…。
――例えその果てで、全てを失うことになったとしても。
『ごめんね…■■■■ちゃん』
『■■■!!』
それでも、彼女(俺)は選んだのだ。
不特定多数の人々を守るよりも、ただ一人だけを守る正義の味方であることを。
構えていた長杖を、一度だけ横に凪ぐ…。
かかってこいと。
幾百、幾万の言葉などもはや不要。
自分は往く道を示した。
ならば、次はお前達の番だと……訴えかけるように。
『ごめん…』
最後にもう一度だけ、謝辞を述べる。
今こうして戦わざるを得ないとしても、彼女達と過ごした様々な日常は、何にも代え難い物であったと…。
今まで、ありがとう…と万感の想いを込めて。
「…………ぅ…?」
そこで、目を醒ました。
窓から差し込んでくる光は、穏やかに朝の到来を告げ、昨日のことが実は夢なんじゃないか…とすら思えてくる。
まぁ、もう少し寝ててもいいだろ…。
なんて自堕落な考えから、寝返りを打ったそのとき。
――フニュ…。
なんとも柔らかい感触。
それは、例えるならば人肌の柔らかさだ。
きっと誰か隣で寝てるんだろ…。
ほら、別段大したことじゃない。だからもう少しだけ……って、ん?誰か隣で寝てるだと?
うっすらと目蓋を開き、その異常を確認する。そこには…。
「すぅ……すぅ…」
穏やかな朝にも負けず、穏やかな寝息を立てるアーチャーがいた。
「えぇぇっ!?」
訳がわからない。
アーチャーは隣の部屋で寝ていたはずだ。
それがなぜ俺の部屋の……しかも俺の布団で寝ているのか?
更に問題なのは俺の手が、アーチャーのふくよかな…む、む、胸に当たっているって事で…。
――分からない。
直死の魔眼を持つ貧血少年よろしく、思考停止に陥る。
そのときだった。
――ガラッ!
「どうしましたシキッ!!」
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